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果糖中毒

果糖中毒~19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?

ロバート・H・ラスティグ著

中里京子訳

 

全500ページほど。読みやすいし興味ある事ばかり。

食べて本当に安全安心な物なんて無いに等しい

2012年に刊行され訳書の本書が2018年。海外事情の事ですが日本にも起きていきます。

解毒する方法は「食物繊維をとる」「運動する」「本物の食べ物を食べよう」。

ただし理由を知り得てから実行しましょう、でなければ逆効果にも成り得ます。

知は力なり。

 

amazon商品紹介から以下、

アメリカの一流医科大学院の教授が229の医学論文から導きだした「食事」の正解とは?
・低炭水化物ダイエットは「正解」か?
・脳が砂糖をやたら欲しがるのはなぜか?
・食べた分だけ動けば確実にやせるのか?
・カロリーを減らせば体重は減るのか?
サプリメントは本当に効果があるのか?
・「肥満は自己責任」とは言えない6つの理由とは?
・「食べた分だけ動けばやせる」は大間違い
・糖分に含まれる「果糖分子」をとると内臓脂肪が増え、空腹感が増す
・「これ」なら食べてもいい! 果糖を締め出す食品リスト316
・ストレスを受けると内臓脂肪がピンポイントで増える
・体重の6%しかない内臓脂肪があなたを殺す
・内臓脂肪を減らしたいならこの「4ホルモン」を動かせ
・エネルギーのほとんどは「寝ているとき」に燃える
・食べる量を減らすと、エネルギーが燃えにくくなる
・1日15分の運動が寿命を3年延ばす
・糖尿病の死亡者数がこの20年で3倍に
・全世界の人々の5.6%が糖尿病に
・「脂肪悪玉説」が脂肪を増やす
・糖分を使うと加工食品の売上が上がる理由とは

アメリカのアマゾンで900レビュー以上、平均4.6!
13か国で読まれ、世界中の食品業界を震撼させたNYタイムズベストセラー、ついに邦訳!

目次抜粋

はじめに なぜ人類は突然太りだしたのか
・第I部 「肥満は自己責任」のウソ
第1章 19億人が「太り過ぎ」の世界
第2章 カロリーを減らしても脂肪は減らない
第3章 あなたは「誰か」に太らされている
・第II部 脳があなたを太らせる
第4章 エネルギーを体に貯めさせる元凶ホルモン
第5章 糖分が脳に「快楽」を与える
第6章 ストレスを受けると太るメカニズム
・第III部 細胞があなたを太らせる
第7章 細胞が脂肪で満たされるしくみ
第8章 皮下脂肪は「長生きの素」、内臓脂肪は「死の脂肪」
第9章 メタボ症候群があなたを殺すまで
・第IV部 社会があなたを太らせる
第10章 「脂肪悪玉説」が脂肪を増やす
第11章 安くてうまい「果糖」という毒
第12章 果糖中毒の解毒剤1「食物繊維」
第13章 果糖中毒の解毒剤2「1日15分の運動」
第14章 サプリメントは気休め薬
第15章 「太らせ因子」に触れると脂肪細胞が増える
第16章 食品業界が「毒」を使いたがる理由
・第V部 「果糖中毒」から更生する最強プログラム
第17章 「果糖中毒」更生プログラム1 毒を締め出す316の食品リスト
第18章 「果糖中毒」更生プログラム2 ホルモンを正常化する4つの習慣
第19章 「果糖中毒」更生プログラム3 最後の手段、医療手術
おわりに 肥満で儲けている企業と戦う方法

これらの疑問に答えながら、「人が太るメカニズム」を徹底解明。

腦、ホルモン、細胞、社会、食品業界のしくみにまで踏み込み、「健康な脳と体」に戻るための処方せんをあざやかに提示する!

 

訳者あとがきよりメモ

本書は2012年12月に刊行され、『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストを飾った“Fat Chance(略)”邦訳です。刊行以来、肥満対策のバイブル的存在になり、専門家・一般読者を問わず広く読まれて、世論や政策に大きな影響を及ぼしてきました。

(略)

ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)
1957年ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校小児科教授。マサチューセッツ工科大学卒業後、コーネル大学医学部で医学士号を取得。2013年にはカリフォルニア大学ヘイスティングスロースクール法律学修士号(MSL)も取得。小児内分泌学会肥満対策委員会議長や内分泌学会肥満対策委員会委員などを歴任。「果糖はアルコールに匹敵する毒性がある」と指摘した講義のYouTube動画「Sugar: The Bitter Truth(砂糖の苦い真実)」は777万回以上視聴されるほど大きな話題になった。

 

ラスティグ医師は、2001年にUCSFに赴任する前、テネシー州メンフィスにあるセント・ジュード小児研究病院で、脳腫瘍やその治療の過程で視床下部が損傷した子どもたちの治療にあたっていました。そして、そうした子どもたちの多くが重度の肥満に悩まされているのを目の当たりにし、視床下部の損傷によりレプチンホルモンが感知できなくなったことが飢餓反応をもたらしたのではないかと考えはじめます。視床下部の修復は不可能なため、その「下流」に治療のヒントがあるのではないかと調べていくと、こうした子どもたちのあいだでは迷走神経の活動が高まっており(体が飢餓状態にあるという合図)、その結果、インスリンの分泌が増えていることに気づきました。そこで、インスリンの分泌を抑制する薬、オクトレオチドを投与したところ、体重を減らすことができただけでなく、子どもたち自ら体を動かすようになったのです。同じ効果は、中枢神経系に損傷のある大人でも見られました。

 

しかし、高いインスリンレベルが肥満と結びついていることはわかったものの、インスリンと糖分との関係については、まだ気づいてませんでした。当時の多くの医師と同じように「どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをする」と考えていたからです。しかし、シンポジウムの準備のために糖分に関する文献を読み漁るうちに、果糖が人体に対して、アルコールのように働くことに気づきました。砂糖の主成分はショ糖で、ショ糖はブドウ糖と果糖からなります。ブドウ糖は体内にあらゆる細胞で代謝されますが、果糖は(アルコールと同じように)主に肝臓で代謝され、その一部は「新生脂質合成」と呼ばれるプロセスによって脂質に変えられます。そのため、多量に接種すると血液中の脂質が増加するだけでなく、アルコールと同じように脂肪肝をもたらすのです。そして脂肪肝は、インスリン抵抗性とインスリン分泌の増大を招き、インスリン抵抗性はメタボリック症候群、ひいては2型糖尿病、心臓病、がんを引き起こすと考えられています。こうしてラスティグ医師は、常習的に多量摂取する糖分は「毒」であるという結論に達したのでした。

 

本書は、そうした研究結果を集大成し、なぜ人は太るのか、なぜここ30年の間に世界中で肥満が蔓延するようになったのかを、医学・臨床研究と政策分析を統合して考察したものです。誠実な医師であり科学者でもあるラスティグ医師は、読者には「科学的裏付けを知る必要がある」と考えて、「肥満の科学」を詳しく説きます。本人の弁によると、生物学や医学に通じていなくても「いちばん重要なことだけを、おもしろく、気軽に読めるように」書いたということですが、正直なところ、この部分を読み進めるには多少忍耐力がいるかもしれません。でも「知は力なり」です。自分の体で起きていることを知れば、それだけ健康に近づけるのではないでしょうか。それにラスティグ医師は、この糖分の「毒」を解毒する方法もちゃんと示してくれています。突き詰めて言えば、「食物繊維をとること」、「運動すること」、そして“Eat real food”すなわち「本物の食べ物を食べよう」です。

 

紙面の都合上割愛せざるをえませんでしたが、原書には公衆衛生に関する第Ⅵ部があり、主にアメリカ独自の政策の問題点について論じています。ラスティグ医師は、現状を打破するには法律(とりわけ訴訟)に訴えることが欠かせないと考え、大学の特別研究期間を利用してロースクールに通い、法律学修士課程を修了して法律の専門知識を身につけました。具体的な問題点として挙げているのは、肥満を「自己責任」と捉えるアメリカ政府が、個人の問題には介入しないという立場をとっていること、そして第16章で触れた「ファームビル」で守られた農産物生産者や企業のロビー運動には逆らえないという軟弱な姿勢をとっていることなどです。それらに対してラスティグ医師は、栄養成分表示ラベルの改善、国民の栄養に関する監督権を農務省から外すことをはじめ、糖分を多量に含む食品広告の制限、購入者の年齢制限、ジャンクフードの販売場所の制限、清涼飲料水への課税および税率引き上げなどの改善策を提言しています。

 

そうした努力は功を奏し、本書の刊行以来、糖分多量摂取の問題点が徐々に周知されるようになって、アメリカでは栄養成分表示ラベルが改善され(2018年7月より)、清涼飲料水への課税(ソーダ税)も地域自治体レベルで実施されはじめました(カリフォルニア州バークレー市で2015年より、ペンシルべニア州フィラデルフィア市で2017年より)。また、世界的にも、メキシコ、フランス、インド、タイ、イギリスをはじめ、いわゆる「砂糖税」の導入が広まりつつあります。

 

さて、本書にまとめられた糖分の毒性と依存症を研究するなかで、ラスティグ医師は気がかりなことを発見しました。それは、幸せを求める人々の行動が、依存とうつの文化にむしばまれるようなことになったことです。脳に「もっと欲しい」と伝える神経伝達物質ドーパミンが過剰になると依存が生じます。一方、脳に「満足している」と伝える神経伝達物質セロトニンは、欠乏するとうつを引き起こします。現代の世の中には、依存症、不安症、うつ、慢性病が蔓延しています。その背景を科学的に分析し、持ち前の向こう見ずさで政府と企業を相手取って勇猛果敢に綴ったのが、2017年に刊行された次作“The Hacking of the American Mind”(乗っ取られたアメリカの精神)です。ラスティグ節は、まだまだ健在です。

(略)

 

声を上げれば、ルールが変わる

政府が正しいことをしてくれると期待することはできない。

こちらから仕向けることが必要。

例としてシートベルト。今ではしないで運転することなどない。車にシートベルトを備えるようにという連邦指令案が採択されたのは1967年、使用を義務化する連邦指令はなかった。世界初の着用義務を定めた法律が施行されたのはオーストラリア、1970年。

闘い続けて結果、法律で1984年から1993年にかけて現れ始める。

同例は、公共の場での喫煙禁止、毒性廃棄物の処理、麻薬の取り締まりなど、他にもたくさんある。

 

肥満対策も。

1年かけてあらゆる公共の食物提供施設を完全に一新した例がある。

自動販売機はリンゴとオレンジを売るようになり、炭酸飲料は姿を消した

この運動の一環として、マウント・ディアブロ高校の生徒たちは、本物の食べ物の調理の仕方を学び、教師に朝食として提供した。生徒たちは、教師が体重を減らし、学校に来て教えることを楽しむようになる姿を驚きの眼で見つめた。そして今では、自分たちも、それまでファーストフード店の売店で買っていた朝食をやめて、本物の食べ物を食べたいと思うようになった。このデモストレーション・プロジェクトは、米国心臓協会をはじめ、多くの団体の後援を受けて行われ、そのメッセージに力を感じた多くの篤志家の協力を集めている。

 

繰り返す、

解毒方法に、突き詰めて言えば、「食物繊維をとること」、「運動すること」、そして“Eat real food”すなわち「本物の食べ物を食べよう」です。